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2:姿なき心の犯罪(13)

2015年08月31日 21:30

六畳程の畳の部屋。
いつもいる用務員の叔母ちゃんはいない。
茶色のテーブルの向かい側に胡坐をかく先生の顔色を伺いながら
私は畳の上に正座した。




「実はな、今朝、舞が君の事で悩んでいるって
クラスの皆を引き連れ相談に来たんだ。
今朝、挨拶をしたら、おはようございます。って返事したんだろう?」



「・・・」



「舞が言ってたぞ! 同級生なのに何で敬語を使うのか?って
このクラスの仲間じゃないんですね!って泣きながら言ってたぞ。
言ったのか? 
お前はクラスの仲間に、おはようざいますって言ったのか!!」





「言いました・・・」




舞や先生の言うとおり
確かに私は言った。
だが何故私がその言葉を口にしたのか
その理由は聞くどころか
気にとめようともしなかった。



同級生も
同級の親も親族も誰もが顔なじみの
寂れた田舎町。
30人も満たない1クラス。
毎日、生徒たちを見ている先生が
分からないはずがない。
だが皆、見て見ぬふり。
大人達は自分の都合の良い所しか見ないようにする。




狭い図書倉庫で
昨日と同じように何発も叩かれ
立っている事ができない私は
床の上に崩れおちるように這いつくばった。


緑色のビニール素材の床に
四つん這いになった私は大声をあげ泣いた。
狭い倉庫から漏れる私の泣き声が誰かの耳に届く事を願って
誰かがこの扉を開け助けてくれるのを夢見た。
誰でもいい。
誰かに気付いて欲しかった。
助けて欲しかった。
泣き崩れる私の肩を抱える取り巻き共に支えられ
水道へ連れて行かれる。
そして「よし!」という号令がかかるまで
何度も顔を洗わされる日々が続いた。


2:姿なき心の犯罪(12)

2015年08月30日 20:30

玄関に投げつけられたランドセルを
拾い上ると
学校へと向かう坂道をのぼる。



「おはようっ!」



反射的に体がビクッと反応した。
道路の右側を歩いていた舞の取り巻きの一人が声をかけて来たのだ。
誰に声をかけているんだろう。
きっと私じゃない。
だが彼女の視線の先を追っても私しかいない。
明らかに彼女は私に声をかけていた。




終わった?    
虐め?!
昨日で終わったのかな?




「おっ、おはようっ!」



私は必死に作った笑顔で彼女の挨拶に答えた。
だが教室に足を踏み入れても
いつもと何ら変わりなく
私の机の中には
あの手紙が入っていた。



   ---------   お前、昨日言われた事なんで守らないんだよ!

           おはようございますだろ?



薄暗い図書倉庫の中
肩を突き飛ばされ理解した。      
あれは私が与えられた任務を果たしているか
その確認だったのだ。


翌日から
同級生と遭遇した時は指令通り
「おはようございます」
という挨拶をするようにした。
そしてこの日
ホームルームを終えた直後
私は担任の先生に用務員室へ来るように言われた。


2:姿なき心の犯罪(11)

2015年08月29日 19:26

翌日
母に起こされても私は布団から出なかった。
業を煮やした母が
布団に潜りこむ私の体から無理やり布団を奪い取る。



「お母さん・・頭痛い・・・」


嘘。
頭なんて痛くない。
学校へ行きたくないだけ。
だけど休む口実がない。





どうしても学校に行きたくない私は
始業時間になるまで自宅のトイレから出なくなった。
部屋から聞こえるテレビの音で時間が分かる。
そこまで徹底すると母も諦め学校へ電話を入れた。





学校では
あの薄暗い図書倉庫で同級生に叩かれ
帰宅すれば
父が待ってましたと言わんばかりに
罵声を浴びせ、暴力を振った。
週末になると
あのクソ意地の悪い婆と詩織の家へ泊まりに行かされる。
どこも行き場がなかった。
自分の居場所がなかった。
安心してゆっくり過ごせる、心休まる場所というもがなかった。
だがこの時だけは違った。
学校をズル休みし
父が仕事でいない時間。
この時間だけが唯一、私に与えられた至福の一時だった。





だがこんな事が許されるはずがない。
どこにも行き場のない私は
いつしか施設に行きたい!と思うようになっていた。
だが私には何の術もない。




    --------- 学校には行きたくない! 




泣きながら主張する私の腕を母は無理やり引っ張ると
ランドセルと一緒に私の体を家から突き飛ばした、
地面に叩きつけられ足を擦り剥いては
泣きながら学校の坂道を一人で登った。
家でも学校でも涙を流さない日はなかった。



2:姿なき心の犯罪(10)

2015年08月28日 18:29

だが現実はというと私の頬は
おたふく風邪のように赤く腫れあがっていて
教室に戻った私の姿を見た同級生達は
何があったのか察し
誰もが恐れ目を背けた。





次は、自分の番になるんじゃないか・・
皆の瞳がそう物語っているのを感じた。



正義のヒーローとやらは
どこへ行ったのか。
そんなモノこの世に存在しない。
存在しないからこそ
誰もが理想とするモノを追い求め
描き作り上げる。
結局、皆自分が一番可愛いのだ。
自分さえ良ければそれでいい。
自分に害さえ及ばなければ
人が犠牲になっていようが関係ないし
自分を守るためなら
多少の犠牲は致し方ない。
私はそういうモノを嫌という程
目にしてきた。



家に帰った私の顔を見た母は
心配していたが
私は体育の授業のドッチボールで
男子の投げたボールが顔に当たったと嘘を付いた。
母に心配をかけたくなかったし
これ以上、母を苦しめたくなかった。



だが理由はそれだけじゃない。
脅されていた。
チクるなよ、チクったらコろすぞ!と脅されていた。
先生や母が知ったら
もっと酷い仕打ちが待っていると思うと
恐怖で私は誰にも打ち明ける事が出来なかった。


2:姿なき心の犯罪(9) 

2015年08月27日 18:27

息をとめても
嗚咽が漏れ肩が揺れる。





   ―――  早く来い!



倉庫のドアが開かれ
背中を押され
外に放り出される。
涙で潤む瞳の中に眩しい光が飛び込んできて
眩しさで一瞬
目の前が真っ白になり何も見えなくなった。
髪の毛はグシャグシャ
そんな私を取り囲むかのように
私の肩と背中に手をかけ
ローカへ誘導する取り巻きの一人が言った言葉を
私は一生、忘れる事ができないだろう。





    ―――  大丈夫? 何かあったの?




一瞬、何を言っているのか理解出来なかった。
彼女達は、まるで泣いている私を助け出したかのように
私の背中を押し水場へと連れてゆく。




    ―――  泣いてるのがバレたら大変でしょう? 早く顔洗いな!




そういう事か。
私は蛇口をひねり水で顔を洗った。
口の中を切っているのか
それとも水道の錆なのか鉄の味がする。
私の顔を何度も確認する舞達。
私は彼女達が「よし!」と言う号令をかけるまで
ただひたすら顔を洗い続けた。
堪えていたものが吹っ切れたとでも言うのだろうか
あれほど酷い事をされたというのに
不思議なもので泣いた事でスッキリしたのを今でも覚えている。
この時の私は清々しささえ感じていた。





2:姿なき心の犯罪(8)

2015年08月26日 18:26


それから私は頬を叩かれた。
何発も何発も叩かれた。
いいか、歯を食い縛れ!
歯を食い縛れ!と言われ
右左の頬を交互に何発も叩かれ続けた。








   うっ・・うっ・・・・








恐怖なのか
痛みなのか
涙が溢れ嗚咽が漏れる。
 


 

    ―――   早く、言え!!



       お  は  よ  う  ご  ざ  い  ま  す。  だろ?




       おっ・・は・・・よう・・ごっ・・ざいまっ・・す。

 

恐怖の中
嗚咽が漏らしながら
挨拶の練習をさせられた。




    ―――  泣くなよ! 泣くなって言ってんだろッ!! 





       うっ・・・うっ・・・






    ―――   泣くなって言ってのが分からね―のかよ!!







恐怖のあまり息を飲み込むと

呼吸を止めた。





2:姿なき心の犯罪(7) 

2015年08月25日 18:22

何をされるのか
恐ろしくてたまらなかった。
怖くて怖くてたまらなかった。
怯える私に大声で何度も言った。



もっと! もっと! 歯をくいしばれ!

         
力いっぱい食い縛れ! 

            
力いっぱい食い縛らないと痛いぞ!

   
いいのか? 痛いぞ!!!!





もっと!


もっと!


もっと!


もっと!!!


何度も発せられる言葉に恐怖が増していき
私は言われたとおり
全身に力を入れるとギュッと瞼を閉じた。



        バシッ!!



頬に焼けるような熱い痛みを感じた。



2:姿なき心の犯罪(6) 

2015年08月24日 18:22

それからというもの虐めは形を変え
日に日にエスカレートしていった。
教室に戻ると
机の中に折り曲げられた小さな紙が入っていて
そこにはこう書かれていた。



   


        昼休み、図書倉庫に一人で来い。 






制服のポケットに紙を入れ
図書倉庫へ向かう。
三畳程の広さの倉庫の照明は
豆電球という事もあり薄暗い。
真っ暗だが目が慣れるまでそう時間はかからなかった。
室内には舞と取り巻き達が待っていて
その中の一人が私に向かって言った。







    ――――― おはようだと? 舞さんに生意気な口をきくんじゃねーよ! 
        
        おはようございますだろ!!






そう。
舞は舞ちゃんではなかった。
皆「さん」付けで呼んでいた。





    ―――  言え、言ってみろ!







    ―――  早く言えよ! 







服の襟を掴まれ棚へ突き飛ばされた。
すると今度は別な子に胸倉を掴まれ突き飛ばされる。
狭い倉庫
誰かしらの体に当たった。







    ―――  ウワッ、汚ねーっ。






    ―――  病気がうつる、バイ菌がうつる!!





    ―――  こっちに来るんじゃねーよ! あっち行け!




右へ左へ私の体は振り子のようにフラフラとよろめいた。
右へ行けば突き飛ばされ
左へ行けば背中を押される。
次第に気分が高揚するのか
取り巻きの一人である女が私の顎を掴むとこう言った。





    ―――  いいか、歯をくいしばれ!





2:姿なき心の犯罪(5)

2015年08月23日 18:21

いつしかこのドアを開くのが怖くなっていた。
教室が近付く度
足が重くなり逃げ出したくなった。
だけど変われる気がした。
私、変われるんだ。
前みたいに明るい自分になりたい! 
元気な私に戻りたい!
いつも重たかったドア。
そのドアを力一杯、開けた。






「舞ちゃんっ! さっきはありがとうねっ、

ほらっ見て、先生に綺麗にしてもらった。」



フンッ!!!
という言葉を大袈裟に口すると
舞はそっぽを向いた。





何で・・・? 
さっきまで普通に喋ったてたのに。
あんなに優しくしてくれてたのに・・




「舞ちゃん・・・? どうしちゃったの? 私、何かした?」


「何慣れなしく”舞ちゃん”って呼んでるの?舞さんでしょう!」



取り巻きの一人に肩を突き飛ばされた。




    ――――――   ちょっとぐらい優しくされたからって


            いい気になってんじゃねーよ! バ―カ!



    ――――――   バ―カ! バ―カ!!





バカって言葉が教室に響いていた。
私を転ばせたのは舞。
足をケガさせたのも舞。
そして助ける優しい女の子を演じてたのも舞。
全部、舞の仕組んだシナリオだった。
それなのに舞が声をかけてくれた事
肩を貸してくれた事を嬉しく感じる私がいた。
憎めなかった。
嫌いだったけど
大嫌いだったけど憎みきれなかった。






それどころか舞が転校してきたあの日
声をかけなかった自分に後悔する自分がいて
あの日に戻して欲しいって!
何度も思った。






     ―――  すごーーい! 舞ちゃん、これ可愛いーっ、羨ましいなぁ。






皆と同じ様に舞の持ち物を見て
彼女の機嫌を取っていたら
今頃、虐めなんかに遭わなかったんじゃないか
他の子がターゲットにされてたんじゃないのかって
今更どうにもならないような事を何度も悔やむ私がいた。


2:姿なき心の犯罪(4)

2015年08月22日 18:20

「血が出てるよ、歩ける? 私につかまって。

ほら、こっちに手を回して。」


私の腕を自分の肩にかけると
抱えるように保健室へと運ぶ。
今まで散々笑い者にし
私を無視しつづけた舞。
その舞が私に優しくしてくれている。
あんなに酷い事をされたのに
なんでだろうね。
舞に優しくされ嬉しく思う私がいた。







「先生、足をケガしてたので連れて来ました。 診て下さい。」


「あら本当、血が出てるじゃない。舞さんが助けてくれたの?」


「はい、私達友達ですから。」


「まぁ、舞ちゃんは本当に優しいのね、

良かったわね、優しい友達を持って。」




私と舞の頭を優しく撫でてくれた先生。
私は嬉しくって力強く頷いた。
意地悪だって思った。
大嫌いだった。
だけど舞は誰よりも優しいんだね。
私を助けてくれたのは舞だもん。
舞と仲良くやっていけそうな気がする。






「痛っ・・。」



オキシドールで消毒する膝からは
白い泡がふいていた。
だけどそんな痛みなんかよりも
舞の待つ教室へ戻るのが楽しみで仕方なくて
私は擦り剥いた左足を引きずりならが
足早に階段を昇り教室へと向かった。





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