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1:故郷(18)

2015年08月13日 10:45

父の給料は
湯水の如く酒と博打に消えていった。
このご時世
家には電話すらなく
食料すら買うお金もないため
母はいつも近所の人に頭を下げて金を借りては
ツケで買い物をしていた。



店に買い物に行く度に
母は必ず私や妹について来てほしいと言った。
当時の私にはその真意が分からなかった。
ツケの代金を滞納する中
さらにツケでしか買い物ができない母は
一人で店に行き
店主にツケを頼む事が心苦しかったのである。
そんな母はいつも店で小さくなり
店主の顔色を伺いながら物を買っていた。





そんな生活に苛立ちを抑えきれないのか
母のヒステリーが度々顔を出す。
洋服を着る時もそう。
ボタンを一つかけ間違えでもしたら
母は袖口を思いっきり引っ張り言った。






  ――― お前は一体、何歳なんだ! 

     この歳になっても服もまもとに着れないのか?!    

     詩織を見習え! 詩織は一人で何でも出来る!




母は自分のストレスを発散するかのように
何度も、何度も袖口を足元へ引っ張り続けた。
力強く引っ張られる度
肩に激しい痛みが走り
体制が崩れ足元がよろけてしまう。
それでも母は私が痛いという言葉を口にするまでやめなかった。
そんな母の姿を目にする度に
こんな事でしか自分のストレスを発散する事が出来ない
母の事を可哀想だと思った。
どんなに嫌味や皮肉を言われても
私は母を憎む気にはなれなかったのである。  





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