FC2ブログ

スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

5:消えゆく光(3)

2015年10月10日 10:49

怖くて入れなかった。
恐怖で手足の震えが止まらないのに
私の足は
セメントで塗りかめたかのように固まって
一歩足を踏み出す事ができずにいた。




  ---------- 何やってるの、早く入ってご飯食べなさい。



母に促され
重苦しい空気の中、黙って家に入る。
部屋にカバンを置き
居間へ行くものの
誰も私と目を合わそうとせず何も話さない。
テレビの音だけが不気味な程
小さな家の中に響き渡っていた。




「いただきます。」



ご飯を口元まで運ぶが全く味がしない。
息苦しさが襲い
やがて呼吸をする事さえも緊張する。
息を吸う音も
吐き出す音さえも
父に聞こえるんじゃないかと思うと
恐怖のあまり耳障りに感じられ
私は度々息を止めてみる。
気分が悪い。
空腹ゆえか目眩に襲われた。




食卓に置かれた唐揚げ。
だが取れない。
いつからこんな風になったのか分からない。
皆で食卓に座っても
私はいつも遠慮していた。




気付いて欲しかった。
何でいつもご飯しか食べないんだろう。
おかずも食べなさいって言って欲しかった。
ただ黙々と
白い米粒だけを口に運ぶ。


その米粒が何度も喉に詰まりそうになって苦しかった。
何が哀しいのか分からない。
お米しか食べられない事なのか
門限に遅れた事に対してなのか
私が約束も守れないような人間だからなのか
こんな家で
生きていかなければならない事に対してなのか
こみ上がる涙と共に
米粒を喉の奥にグッと押し込んだ。




最新記事


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。