FC2ブログ

スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

18:夜空に瞬く星達よ(5)

2016年05月14日 22:13

会社の寮に着いた時
部屋から飛び出し
こちらへ向かって来る女性の姿が見えた。


「こーちゃーん! 久しぶりーっ!」



明るく声をかけきたのは同期の和美。
隣県出身者の彼女とは入社試験の時
宿泊したホテルが同じ事もあり行動を共にしていた。
明るくて活発
元気の良い田舎娘といった感じの彼女は
目鼻立ちが整った女の子であった。


「あっ、これ、こーちゃんの荷物だよ!」

「私の荷物?」

そこには通路を塞ぐ程の大きな荷物が置かれており
差し出し人の欄に両親の名が書かれてあった。
中身は羽毛布団と毛布。
荷物の事等、一言も口にしていなかった両親。
何もしてやれないという後ろめたさなのか
何も言えなかったのだ。



         
  お金大丈夫? 



上京する前の事であった。
母は毎日、確認するかのように
この言葉を投げかけていた。
バイトで貯めたお金が二十万はあるから大丈夫だよ、心配しないで。
表向きはさも物分かりの良い娘を演じながらも心の中は違った。
何も出来ないくせに、心配している振りなんてしないで。
心の中では両親の事を罵っていたのだ。


私の為に使う金なんて家には一円もないと思っていた。
憎んでいた。
心の底から憎んでいた。
だからこそ故郷という地を離れる時も
両親の涙を目にしながら
涙の一粒も零れおちなかったのだ。



無造作にローカに置かれている荷物を目にし
空港まで見送りに来てくれた両親に対し冷たい態度で接し
素っ気なく別れた事を少しだけ切なく思う。
あんなに出たいと思った家。
あれほど望んでいたはずなのに
この時、初めて寂しいと感じた。




最新記事


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。